マーケティング

自転車屋は空気入れを無料で貸すべき?マーケティング的に考えてみた

しゅうへい
しゅうへい
自転車の空気入れを貸してください!
自転車屋さん
自転車屋さん
1回50円です。

町の自転車屋さん。
空気入れを無料で貸してくれるお店もあれば、有料のお店もあります。

本記事ではマーケティングの視点から「空気入れの貸し出しは有料?無料?」を考えてみます。
それではいってみましょう!

空気入れを借りたいが有料だった。借りるべき?


久しぶりに乗った自転車。
しばらくこいでみたら、あなたはタイヤに空気が入っていなかったことに気づきましたら。
自宅に戻るのは面倒だし、どこかで空気入れを借りることしました。

そこで見つけた町の自転車屋さん。
お店の人に貸してくれるか聞いてみたら

自転車屋さん
自転車屋さん
1回50円です。

といわれました。

自転車屋さんは空気入れを有料で貸すべきでしょうか?
それとも無料で貸すべきでしょうか?

Attentionの重要性


マーケティングの用語のひとつに「AIDMA」という言葉があります。
AIDMAは顧客がモノやサービスを購入するまでの心理的プロセスの段階をまとめたものです。

Attention(認知をとる)

Interest(興味を引く)

Desire(欲求に訴えかける)

Memory(記憶を喚起する)

Action(行動を起こさせる)

の頭文字をとって「AIDMA」といいます。

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モノやサービスに溢れた飽和な時代である現代は、まず何より「知ってもらうこと」が大事。
知られなければ誰からも買われません。
知ってもらうこと、つまり「Attention(認知)」をとることは、現代の商売では必要なことなのです。

自転車屋さんのマーケティング


Attention(認知)
をとることは自転車屋さんにも必要なこと。
しかし「だから空気入れを無料で貸すべき!」と答えを出すのは、まだ早いです。
空気入れの無資料貸し出しには、相応のデメリットもあるからです。

ここでは自転車屋さんのAttentionの取り方と、空気入れを無料で貸し出す長所・短所をみていきましょう。

自転車屋さんのAttentionのとり方

自転車屋さんには、自転車屋さんだからできるマーケティングがあります。

✔️何よりの強み!路面店
大通りであればあるほど「そこにある」だけで強みになります
店頭に自転車を置いておくこととで、人の目に触れる機会がグッと増えますよね。
有料・無料問わず「空気入れ貸します」とPOPを貼っておけば、人が入ってくることは間違いなしです。

✔️歩く広告塔!ロゴや屋号の活用
自転車の本体や付属品に、ロゴや屋号を入れることも有効です。
オリジナルグッズは「歩く広告塔」ともいわれています。
ユーザーに使ってもらえるようなオリジナルグッズをノベルティとして配る方法もあります。

無料で貸すべき?有料で貸すべき?


では、はたして自転車屋さんは空気入れを無料で貸すべきでしょうか?
それとも有料で貸すべきでしょうか?
どちらもメリット・デメリットがあります。
デメリットへの対策も考えてみました。

ここにボックスタイトルを入力

■メリット
見込み客とのコミュニケーション機会が増えて需要を知ることができる

■デメリット
空気入れが壊れて経費がかさむ
店員の手間が増える

■デメリットへの対策
店員が空気入れの対応をする
空気入れの使い方を説明したPOPを貼る
毎年経費で空気入れの新品を購入し、使い古しの空気入れはアウトレット品として販売する(リセールする)

ここにボックスタイトルを入力

■メリット
万が一空気入れが壊れた時の買い替え費に充てられる

■デメリット
見込み客とのコミュニケーション量が減る

■デメリットへの対策
希望により空気入れ+α(5分のカンタン点検など)を無料で行いコミュニケーションの質を上げる

顧客側の心理


無料で借りていたことの方が多かったので非常に驚き、「結構です」と断りを入れ、ベコベコのタイヤのまま自転車をこぎました。
結果、全然進まず疲れてしまいました。

タイヤに空気を入れた方が快適に進みます。
必要以上に疲れることもないので、本心としては空気を入れたかったのです。

もちろん、無料で貸してくれることが当然とは考えていませんし、ありがたく貴重な存在であることは間違いありません。
でもお金を支払わない(=空気入れを借りない)選択をしました。

それはなぜでしょう?

アンカリング効果


自転車専門店のサイクルベースあさひでは、空気入れを無料で貸し出ししています。
2022年8月20日時点での全国の店舗数は512店舗。
うち、東京都に70店舗、大阪府に57店舗です。

関東圏に100店舗以上出店している自転車専門店のサイクルスポット無料貸し出しをしていました。
これだけの店舗数で、空気入れを無料貸し出しをしていると「空気入れは無料で借りられる」という印象が強く残ります。

これを心理用語で「アンカリング効果」といいます。

アンカリング効果とは?

アンカリング効果(Anchoring Effect)とは、最初に与えられた数字(アンカー)を基準に考えることで、その後に提示された別の数字への認識が異なるという現象です。 心理学における認知バイアスの一つです。
引用 >> 【アンカリング効果とは】最初の数字が人の行動を決める!? 活用法と注意点

アンカリング効果によって「空気入れの貸し出しは無料であるべきだ」という固定概念が作られてしまい、有料であることに拒絶反応を起こしてしまったのでしょう。

貸すだけで好意を感じてくれる?ザイオンス効果


無料で空気入れを貸すことで、見込み客が繰り返し店舗に訪れてくれる可能性が増えます。
何度も店舗に来てスタッフが丁寧な対応するうちに、見込み客の「店舗への親密度」が高まります。
実は、人は同じ人に接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持つようになります。

これを「単純接触効果(ザイオンス効果)」といいます。

好印象を持つことでコミュニケーションの質が高まり、需要の調査やセールスがしやすくなります。
ちなみに、ザイオンス効果にはプラスの効果(好印象)だけでなく、マイナスの効果(悪印象)もあるのでご注意を。

【結論】手間をとるか、認知をとるか


結論は「手間」「認知」のどちらをとるかの選択になります。

スタートアップ期であれば、認知を取ることを優先しましょう。
空気入れは無料で貸し出すことを検討してみてください。

経営状態が軌道に乗って安定して右肩上がりならば、手間(コスト)削減を目指した方がいいですね。
スタッフの労働負担を減らすこともコスト削減につながりますので、空気入れを有料で貸し出し、手間を削減しつつ、収益を増やしましょう。

有料・無料のどちらにしても一長一短。
現在の経営状況に見合った選択をしていきましょう!