マーケティング

現代の魔法・ナッジ理論|わかりやすい具体例【12選】

「いつもキレイに使っていただきありがとうございます」

公共のトイレに入ると見かけるこの一言。
いつも間にかあらゆるトイレで見かけるようになりました。

実はこの一言、人間の心理を利用しているのです。
ささやかなきっかけで人の行動を変える「現代の魔法」といわれています。
それでは詳しく見ていきましょう!

現代の魔法「ナッジ理論」


ナッジ理論とは、相手に選択の自由を残しつつ、より良い選択を促す考え方です。

ナッジ(nudge)とは直訳すると「肘で軽く突く」という意味です。
注意を引くために肘で突くことを指します。

2008年にアメリカの経済学者、リチャード・セイラー教授と、法学者のキャス・サンスティーン教授が提唱しました。
現在では多くの企業において、マーケティング戦略に組み込まれています。

ささやかなきっかけを与えることで、人の行動を変えてしまうので「現代の魔法」といわれています。

ナッジ理論の基本的な考え方


イギリスは、ナッジ理論を公共政策として取り入れています。
イギリス政府はナッジ理論を活用する中で、特に効果のあったポイントを4つにまとめました。
4つの頭文字をとって「EAST」というフレームワークです。

・Easy(簡単・簡潔)
シンプルなメッセージで伝えること 。手間をなるべく減らすこと。

・Attractive(メリット)
取り組むメリット(お金以外の報酬)を用意すること。

・Social(社会性)
「みんな同じことをしている」という社会規範を示すこと。

・Timely(タイミング)
適切なタイミングで情報を伝えること。

ナッジ理論の基本的なテクニック


EASTのフレームワークに基づき、ナッジ理論を利用する基本的なテクニックがあります。

・デフォルト
選んでほしい選択肢を最初から設定しておきましょう。たとえば、ネットショッピングで「メルマガを受信する」に最初からチェックが入っていることが挙げられます。

・フィードバック
特定の行動に対して反応が返ってくる仕組みを用意しましょう。部下が仕事の報告をした時に、上司が明確にフィードバックすると部下の前向きな気持ちが醸成されやすくなります。

・インセンティブ
特定に行動に対してメリットを与え、再度行動を促しましょう。ポイントカードはわかりやすいインセンティブの例ですね。

・選択肢の構造化
選択肢をわかりやすくし、特定の選択肢に誘導しましょう。会社の表彰は、周りからの賞賛を集めやすくし、満足度を高めるでしょう。

ナッジ理論の具体例【12選】

ジェネリック医薬品

以前はジェネリック医薬品を希望するためには、患者から申告しなければなりませんでした。
しかし、処方箋の書き方を変更し「ジェネリック医薬品を認めない場合は医師が署名」しなければならなくしました。
この一手間を避けるためにジェネリック医薬品の流通が増えました。

空港の歩道


空港内は広く、迷いやすいですよね。
さらにたくさん歩くので、旅行前に疲れてしまいます。
そこで陸上競技場のトラックを床に描くことで、自然を迷わず目的地まで導けるようになり、さらに旅行者のわくわく気分の醸成に成功しました。

スーパーのかごの大きさ

買い物するとカゴいっぱいに商品を入れたくなるという心理を利用して、カゴを大きくして売り上げアップに成功しました。

看護師のユニフォーム

熊本の病院では、看護師の長期労働が課題となっていました。
そこで日勤と夜勤のユニフォームを別の色にしたところ、長期労働や離職率が低下。
夜勤から日勤になり、徐々に別の色のユニフォームを着た看護師が増えることで、自然と仕事を切り上げて帰らなきゃと思わせたようです。

店頭でのアルコール消毒

アルコール消毒までの道筋を矢印などのテープで示すことで、自然と人が流れるようにしました。

階段「〇〇カロリー」

階段に「ここまで登って〇〇カロリー」と書くことで、健康志向を高め、自然と階段を利用する人を増やすことに成功しました。

階段「ピアノの絵」

階段にピアノの絵を描いたことで、階段の利用者を増やしました。
多くの人が階段を利用することで、隣にあるエスカレーターやエレベーターの使用率の低下に成功し、電力節約につながりました。

健康診断の受診率

受診率を向上させるために選択肢を減らすなど、受診のハードルを下げることで、受診率を高めることに成功しました。

自転車置き場の張り紙

放置自転車が増えてしまった雑居ビル。
「ここは自転車捨て場です。ご自由にお持ちください」と張り紙を貼ることで、放置すると持っていかれるという心理を働かせ、放置自転車を劇的に減らすことに成功しました。

男子トイレの便器

男子トイレの立ち小便器にハエ絵を描いたところ、無意識にハエの絵を狙うようになり、床の汚れが減りました。
結果的に清掃にかかる費用の節約にもつながりました。

イベントでの写真撮影

HPなどでの公開を目的としたイベントの写真撮影。
従来は「許可」「不可」を訪ねていましたが、不可の割合が多く、思うように撮影ができませんでした。
そこで「不可の方はお申し付けください」というスタイルに変更したところ、不可の方が激減し、撮影も気にせずできるようになりました。

コースの選択


松・竹・梅のように、3段階のコースを設定
すると、真ん中の「竹」を選ぶ人が多い傾向を利用して「竹」の利益率を高くしました。

【結論】「選ばなくていい」は最強の選択肢

✔️夕食のメニュー
✔️休日の過ごし方
✔️会議の資料作成
✔️新規事業の立案

会社員は、毎日の生活の中に無数の選択肢があります。
すべての選択肢を吟味し、検討を重ねて選ぶことには限界があります。

ナッジ理論は「選ばなくていい」状況を作ってくれます。
自分で選択しなくても、よりよい方向へ導いてくれるのです。
会社員として取引先やお客様に接する時は、ナッジ理論を利用して、相手に余計な思考をさせない思いやりを持ちましょう。

ただ、ナッジ理論は悪用することもできます。
あくまで「相手のため」に使ってくださいね。

いそがしい毎日を快適に過ごすためには、選択肢をシンプルにする考え方も大切。
こちらの記事で紹介していますので、よければどうぞ↓

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