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MBA Essentials 2023<総合コース>春 第2回 経営戦略「❷重点志向、❸顧客志向」

「我が社の経営戦略は、1億円企業になることです!」

これは戦略ではありません。
企業経営の書籍を読めば序盤に出てくるのが「経営戦略」です。
でも正しい戦略ってなんだかわかりますか?

今回はMBA essentials2023 総合コース春 「第2回 経営絵戦略〜戦略的とは何か?」を受講して得た学びを共有します。
一緒に学び、活動に活かしていきましょう!

MBA essentialsとは?

日経ビジネススクールが開講するプログラム。早稲田大学ビジネススクールのMBA教育をオンラインで気軽に体感することができます。

✔︎週1回・平日夜間に2時間のオンライン開催
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✔︎経営戦略、マーケティング、イノベーションなど10科目

当ブログ管理人が受講したのはこちら↓

日経ビジネススクール
MBA essentials2023 総合コース春

第2回 経営戦略 ~戦略的とは何か?~

講師:山田 英夫 先生

「戦略」という言葉は、企業内で多用され過ぎています。「戦略」は、書類を重厚に見せる枕詞ではありません。本講義では「戦略的」である条件を列挙し、戦略のもつ特徴を理解していきます。日本企業の豊富な事例で説明していきます。

結論

今回の講義は「戦略の立案手順」よりも「戦略的な考え方」に注目した内容でした。
結論として、戦略的であるためには次の6つが揃っていることが条件となります。

❶全体志向  ❷重点志向  ❸顧客志向
❹競合志向  ❺事実志向  ❻利益志向

本記事では、「❷重点志向」、「❸顧客志向」をまとめました。

その他のまとめはこちらから↓

❷重点志向

⑴優先順位をつける

「なんでもかんでも全部やる」というのは無理です。経営資源には限りがあります。

やりたいことには「トレードオフ」が存在するのが常です。
(トレードオフとは、AをするためにはBを諦めるなど、択一状態のことです)

ですので、優先順位を決める必要があります。

▼ヤマト運輸の事例

ヤマト運輸は創業者の小倉康臣さんが「サービス第一、利益第二」を掲げました。
営業時間終了間際に倉庫に1つ宅配便が残っていたとします。

配達をすると顧客は喜びますが、残業などのコストがかかり利益が減ります。
配達をしないと顧客が不満に思いますが、コストはかからず利益が残ります。

この場合、「サービス第一、利益第二」に基づき、配達をするという選択を取るのです。

同じように、優先順位を定めた企業は多くあります。

▼Johnson & Johnsonの場合

顧客>社員>社会>株主

アメリカは株主への還元が重視されています。そのアメリカの企業でJ&Jは、株主の優先順位が低いことは大変珍しいとされています。

他の事例も見ていきましょう。

▼オリエンタルランドの場合

安全>礼儀>ショー>効率

オリエンタルランドは、何よりもゲストの安全を最優先しています。

たとえば炎天下の中でショーを行い、たった1人でも熱中症で倒れたら、そのショーが楽しいものではなくなります。そう考え、過去に夏の日中のショーを暑さのため中止にしたこともあったそうです。

また、記憶に新しいのは3.11の東日本大震災時の対応ですね。売り物の毛布をキャストの判断でゲストの提供。ランドとシーの間のスタッフ専用口を解放。この行動が取れたのは、「ゲストの安全が最優先」という考え方が、全キャストに染み付いているからでしょう。

企業運営をしていく中で、希望が大きくなるにつれて、すべての意思決定をトップがすることは不可能です。現場のスタッフが意思決定をする場面も増えるでしょう。その際に優先順位が決まっていないと、企業としてバラバラの行動を選択してしまう可能性があります。

だからこそ、行動指針としての優先順位を定めることが大切なのです。

⑵トレードオンのイノベーション

先述の通り、ヤマト運輸は「サービス第一、利益第二」の方針を掲げてきました。これはつまり「顧客満足vsコスト」の戦いです。

しかし、あるサービスをはじめてから「サービス第一、利益第二」を言わなくなったそうです。その、あるサービスとは何でしょうか?

正解は「時間指定」です。

ヤマト運輸で最もコストがかかっていたものは「不在」でした。不在があれば最低でも2回以上、配達に行かなければなりません。再配達というコストを、時間指定制度を導入することで、劇的に削減できたのです。

山田先生によると、時間指定は「物流業界のノーベル賞」だそうです。その後、「置き配」や「宅配ボックス」などが生まれ、物流業界に様々なトレードオンのイノベーションが起こりました。ですが、その元祖はヤマト運輸の「時間指定」。

トレードオンのイノベーションを起こすことで、優先順位の下位のものも両立できるのです。

▼Amazonの場合

Amazonは、ウェブ上にマーケットプレイスを持つことで、効率化を図ってきました。ニッチなロングテール商品は、自社で在庫を持たず、出品者が自ら在庫を抱えてもらいます。ですが、売れ筋商品はじしゃで在庫を持ち、効率よく利益を上げています。

▼スーパーホテルの場合

スーパーホテルも、顧客満足とコストの戦いをしていました。特にチェックアウト時のフロントの清算作業。これが最も効率の悪いコストと捉えました。そこでスーパーホテルは次の施策をとりました。

・鍵なし(テンキーに移行)
・冷蔵庫の中身なし(アディショナルコストをなくす)

この施策により、チェックアウトの必要がなくなり、宿泊者はホテルの部屋を出たらそのまま外出できるようになりました。

⑶事業の選択と集中

多事業を保有していると、資源が分散されてしまいます。
V字カーブという考え方があります。

これを一言でまとめると、「すごく大きい会社と、すごく特徴のある会社は利益率が高い」ということです。

中間のミドル層にはまると、利益率が下がり、経営が厳しくなります。これを「Stuck in the Middle」といいます。Stuck in the Middleからの脱出策は次の通りです。

①大きくしてチャレンジャーになる
多額の投資をして規模を大きくする考え方です。スターバックスコーヒーがこれを実践しました。

②小さくしてニッチャーになる
高性能・高品質のハイエンド商品に特化させることで、脱出する考え方です。DENON(旧日本コロンビア)がこれを実践しました。

⑷機能の選択と集中

たとえば製薬会社は、次のような機能が必要です。

研究開発>購買>製造>物流>販売>アフターサービス

近年では、このすべてをを自社で持たず、外注している会社も増えています。自分の会社は何で競争するか(コアコンピタンス)を考える時代となりました。かつては「稼働率の高いものを持って、低いものを買ってくる」時代がありました。

(例)コンピューターは自社で持たず、計算センターに外注する
ひと昔前は「付加価値が高いものは自社で、そうでないものは買ってくる」時代がありました。

(例)自動車産業において、エンジンは内製化し、ワイパーは買ってくる
近年は「競争優位の鍵になるものは自社で持ち、そうでないものは買ってくる」時代となりました。

(例)自動車のエンジンも、一部分はトヨタが、一部分が日産が担当している
つまり、自社の「コア・コンピタンス」を見定めて選択と集中を実践する時代となったのです。

⑸やらないことを決める

ただ、現代はVUCAの時代と言われています。

5年前にChatGPTを企業の取り入れようとした人はいません。不確実な時代では、「やること」を決めるよりも、「やらないこと」を決めた方が総花展開を避けることができます。

マイケル・ポーター氏も、「やらないことを決めることも戦略の一つ」と述べています。

(例)企業のやらないこと
リクルート:人の生き死に関する事業はやらない
ロート製薬:人間の身体が直接触れるものしかやらない
マニー株式会社:HPにやらないことを明記してある

⑹重点志向まとめ

✔️企業経営には優先順位が必要(選択と集中)
✔️優先順位が行動指針になる
✔️優先順位はトレードオフの場合に有効
✔️トレードオフからトレードオンにできればイノベーションが起きる
✔️トレードオンを探していきたい

❸顧客志向

⑴顧客は誰かを考える

例えば、とある認知症病院では、患者に加えて介護者を顧客と考え、「お客様は患者と家族」とうたっています。そのため次のような施策を実施しています。

・面会時間は24時間OK
・当日予約でも宿泊できる設備を病院内に完備
・介護者のための心療内科を作る(現在は閉じている)

営業マンが会っている人が本当の顧客ではなく、その後ろにいる人が本当の顧客であることも考えておく必要があります。

⑵顧客価値

▼寺田倉庫の場合

倉庫業は、大きく、港から近い倉庫の方が利益率が高いといわれています。

寺田倉庫は、「保管」から「保存」へ方針転換をしました。保存とは、「預けた荷物が、出荷した際に価値が上がっていること」です。そのため、ワインや楽器、美術品の保存に特化した倉庫を作りました。

顧客のニーズに合わせたことで、単価を上げ、大手との真正面の戦いを避けることができたのです。

▼ヒルティの場合

かつて小型電動工具の販売を取り扱っていたヒルティ。小型電動工具はコモディティ化し、価格競争に陥っていました。そこでヒルティは、コモディティ化した工具製造販売から一式を貸し出すリースへと事業転換をします。必要な時に整備済みの工具を貸し出すようになりました。

これを「フリート・マネジメント」といいます。

これにより、ユーザーは古くなった工具をだましだまし使うことがなくなり、事故が減ったそうです。

電動工具による事故は、命に関わります。顧客は安心して工具が使えることに魅力を感じ、多少高額でもヒルティのリースを使うようになりました。

⑶Customer’s Customerのニーズ

直接取引をする顧客だけを考えるのではなく、1つ先、2つ先のユーザーのニーズを考えることも重要です。

シーメンスという会社は、電車の発車時に音が出ないようにしてほしいという依頼を受けました。しかし、止まっている物体が動き始める時、どうしても音を0にすることはできませんでした。

依頼をしてきた車両会社の先には、乗客というユーザーがいます。乗客に聞いてみたところ「音がしてしまうのは仕方がない、それよりも不快な音をどうにかしてほしい」というニーズが発覚したそうです。そのため、車両発車時に「ドレミファソラシド」と音階が鳴るようにしたところ、これが大好評。見物客が現れるほどの大盛況だったそうです。

目の前の顧客だけでなく、その先にいる顧客のことを考える。
Customer’s Customerを見ようとすることが大切です。

⑷顧客の経済性の例

顧客は、製品を購入して終わりではありません。交換などのメンテナンス費用や、廃棄にかかる費用。また、購入時の製品選びの時間的コストもあります。

これらのすべてのコストを考えて販売することが大切です。

まとめ

MBA essentials2023 総合コース春 「第2回 経営絵戦略〜戦略的とは何か?」
「❷重点志向」「❸顧客志向」

のまとめはここまでです。

その他のまとめはこちらから。

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